MGMのレーベルの制作の一つに、ジュークボックスに使う特別なプロモーション・シングルのためのコンピレーション・アルバムを作ることがあった。そこには、あるアーティストの作品の関連性のない曲目が複数のバンドのシングル盤として散りばめられていた。また、一般向けに、一握りの通常盤も作られることがあった。これは、MGM/Verveのカタログを宣伝するための盤である。

 アニマルズを扱った MGM Celebrity Sceneセットには、第2弾のバンド(エリック・バードン、ギタリストのヒルトン・バレンタイン、キーボードのデイヴ・ローベリー、ベーシストのチャス・チャンドラー、ドラマーのバリー・ジェンキンス)と、よりサイケデリックなEric Burdon And The Animalsのラインナップ(ギタリストのヴィック・ブリッグス、ギタリスト/ヴァイオリンのジョン・ウェイダー、ベーシストのダニー・マッカロク、バリー・ジェンキンス)が収録されていた。このレコードがリリースされた当時、アニマルズは最新のラインナップとしてアルバムWinds Of Changeを発表していた。バンドの変遷が分かりやすいように、MGMはこのセットの5枚のシングル盤をすべてEric Burdon And The Animalsとクレジットした。

 MGMのシングル盤セットの最後のディスクはIt's All Meat(「Winds Of Change 」のアルバム・トラックとシングルのB面)をトップ・サイドとして使用し、裏表紙には以前のグループによるフレッド・ニールのThe Other Side Of Lifeのカヴァーが使用されていた。面白いことに、It's All Meatはフランク・ザッパのプロジェクト/オブジェクトをエリック・バードンの言葉で表現したもので、つまり、あらゆる種類の音楽はすべて同じ骨から出た肉であるという意味だった。バードンは1967年のアルバムWinds Of Changeのタイトル曲の歌詞の中でザッパを名指しでFrank Zappa zappedと表現した。

 エリック・バードンはフランク・ザッパ、トム・ウィルソン、そしてT.T.G.サウンドを愛していた。ウィルソンは以前、解散間近だったザ・アニマルズの2作目(アメリカでは3作目)を手がけていた。1966年7月4日、T.T.G.で2:30-5:30と5:30-9:00の午後と夜のセッションが急遽手配された。トム・ウィルソンはフランク・ザッパにアニマルズのための曲のアレンジを依頼した。ザッパとウィルソンはT.T.G.にいたが、アニマルズのメンバーは誰もいなかった。エリック・バートンとMGMは独立記念日の前夜祭パーティーをしていた。7月4日は祝日で、スタジオのミュージシャン達はいろいろな場所で忙しく仕事をしていたため、T.T.G.にスタジオのミュージシャン達がいなかったので、ザッパはアメリカ音楽連盟に電話し、その日に参加可能な組合員のセッション・ミュージシャン数名を集めた。

 エリック・バードンとバリー・ジェンキンスがT.T.G.に到着したときにアニマルズは全く準備ができておらず、バードンが何を歌うか決めている間、セッション・ミュージシャンたちは待っているだけだった。バードンのバンドはT.T.G.にはいなかったので、バードンはThe Other Side Of Lifeとフランク・ザッパの All Night Longをセッション・ミュージシャンたちと録音することにした(フレッド・ニール自身のバージョンのThe Other Side Of Lifeにはプロデューサーのニック・ヴェネットとドラマーのビリー・ムンディが参加していた)。これはバートンがセッション・ミュージシャンとレコーディングする初めてのことだった。(このアニマルズのメンバーが辞めた後、2ヶ月後のアルバムEric Is Hereでも同じことをしている)。

 ラリー・ニーチェル(オルガン)、ウィリアム・ロバーツ(「ヘイ・ジョー」の作曲者、ハーモニカ、ギター)、キャロル・ケイ(ギター)、ジョン・ゲリン(ドラムス)がバッキング・バンドを結成した。ザッパはリード・ギターとベースを担当した。All Night LongはザッパがNo Matter What You Doと呼ぶことになる曲の初期バージョンで、セッション・シートではSong X と呼ばれていた。この曲は Smoke Stack Lightningやエリック・バードンが共感できるブルースの影響を受けている。No Matter What You DoはブートレグTis The Season To Be Jelly に収録されている。ウィリアム・ロバーツは All Night Longでハーモニカを演奏している。

 アニマルズのメンバー、ヒルトン・バレンタイン、デイヴ・ロウベリー、チャス・チャンドラーらはレコーディングが終わるころにT.T.G.に到着した。ヒルトン・ヴァレンタインは、バードンがメンバー抜きでレコーディングしたこと、録音されたトラックにそのときの演奏メンバーがクレジットされると聞き激怒した。次のセッションはラリー・ニーチェルの代わりにオルガニストのドン・ランディが参加した他は同じミュージシャンとなった。

 トム・ウィルソンがプロデュースを続けることになったが、ザッパと他のセッション・ミュージシャンたちは演奏せずに解雇となった。エリック・バードンをはじめとするザ・アニマルズのメンバーは、Hit The Road Jack、Lucille、Smokestack Lightnin'、Louisiana Bluesを自分たちの手で録音した。ザッパが参加した2曲と、これらの 「本物 」のアニマルズの4曲は、アメリカ限定アルバムAnimalism(MGM E/SE-4414、1966年11月21日発売)に全て収録された。

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