元ブルース・プロジェクトのヴォーカリスト、トミー・フランダースとのセッションは、ザッパがマザーズ結成後に初めて行ったもので、ボビー・ジェイムソンのファースト・シングルよりも前に行われていた。このシングルが録音されてから17ヶ月以上経ってからリリースされたことに注意してほしい。この遅れはレコードの質とは関係ない。実際、このシングルはフランダースとザッパが最も得意としていたことを見事に表現している。フランダースはこれらのトラックをレコーディングした後、不思議なことに長い間姿を消していた。

 ザッパは、トミー・フランダースのことを知らないことは無かった。ヴァーヴ/フォークウェイズ・アクト「ザ・ブルース・プロジェクト」のヴォーカリストとして、フランダースは1965年夏に始まったニューヨークのブルース・バンドのフロントマンとしてミック・ジャガーのような存在だった。ガールフレンドのマキシンに「ブルース・プロジェクトには向いていない」と説得され、トミーは1966年1月初旬に脱退した。トミーとマキシンは、フランダースがヴァーヴ/フォーキャストのために自身のシングルをレコーディングしたT.T.G.の前月に行われたザッパの深夜の 「Freak Out」セッションに参加していた。

 Friday Night City(原題 「Motown [Friday Night City]」)は、ニューヨーク、具体的にはグリニッジ・ビレッジのストリート・シーンを描いたものである。ザッパのアレンジとギタープレイがフランダースのヴォーカルに効果的にマッチしている。A面は商業的ではないが、何度も聴く価値のある題材と演奏である。原曲のタイトルからすると、この曲の主題はフランダースがニューヨークで作曲をする前に住んでいたデトロイトのことであるにに違いない。

 Reputationはティム・ハーディンが作曲した。フランダースのセッション・シートにはベーシストの名前は記載されていなかったが、両サイドのベーシスト(すなわちザッパ)の証拠は Reputationの全体に流れるベース・ラインから想像がつく。このベースラインは後にLumpy GravyのKing Kongの断片として使用されている。ザッパだけがその部分を知っている。(このベースラインは、Capitol版のFoamy Soakyのセグメントの最初の42秒、Verve版の7:39-8:21 Part Twoセグメント、そしてLumpy MoneyトラックのSection 8, Take 22 のオーバーダブで0:05-0:47の間に聴くことができます。) このReputationのテイクは、リード・ギター、リズム、ブラスのタッチがすべてザッパの典型的なアレンジになっている。フランダースはまたしても一流の演奏で自分の演奏力を証明している。

 フランダースはその後、MGMのシングルやVerve/Forecastのシングルが収録されアルバム The Moonstoneを録音した。その後、彼はザ・ブルース・プロジェクトに再加入して短い活動をしたが、彼のキャリアはそれで終わった。Friday Night Cityのモノラル・シングル・マスターは1997年にブルース・プロジェクトのダブルCD Anthologyで復刻された。Reputationのオリジナルシングルは発行以来、再発はされていない。

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