次のプロジェクトは、ザッパのスタジオワークのもう一段の向上となる、特にスピード感のある笑いの使い方だった。ボブ・ガイは、カリフォルニア州ロサンゼルスのKCOP-TV 13の局長を務めていた。彼はまた、1962年から63年の間に彼の局で放送されたJeepers Creepers Theatreという番組でJeepers Creepers(ジーパーズ クリーパーズ)のキャラクターを演じていた。1958年にジョン・ザッハーレがーDinner With Drac(ドラキュラとディナというホラーソングでトップ10入りを果たしたため、ザッパはガイに同じようなレコードにジーパーズのキャラクターを使ってほしいと依頼した。今回は、ドラキュラがジーパーズと妻のドリスをトランシルバニアの城に招待した後、ジーパーズとドラキュラ伯爵の間で交わされた手紙の朗読が前提となっている。Dear Jeepersでは、バフは、トラック全体に走るホラー効果音の精巧なコラージュを制作し、あちこちにいびきの効果音を仕込んだ。音楽はトラックの30秒までは始まらず、基本的な3コードのインストゥルメンタルで、Doris, squeeze me a glass of a cloudewのかけがえのないセリフに続いて、途中で停止した。

 Letter From Jeepersは、ジーパーズがロサンゼルスではなく、クカモンガから妻のドリスに宛てて口述したものであった。効果音トラックの15秒から始まる高揚感のある音楽の主線は、ジーパーズがドラキュラ伯爵とのディナーで表現した興奮状況と合っていた。笑いの合間に、ジーパーズはクカモンガの天気を詳細に描写した。彼の記述の一つに、「...一年のうち400日は雨が多くてじめじめしている」というものがあった。実際、400 days Of The Yearは、Uncle Meatに収録されていたNine Types Of Industrial Pollutionの初期タイトルであった。

 ドラキュラがフィッシュ・アンド・チップスを出していたことを知ったジーパーズの失望感は、その料理が、実は魚とバッファローチップスであること分かったときに恐怖感に変わった。ジーパーズは魚料理についてThe first one went down easy, but the second one was greasy!(最初の一匹は簡単に食べられたが、二匹目は脂がのっていた!)と言った。数年後、この台詞はザッパの曲 Keep It Greaseyの中でKeep it greasey so it'll go down easyとして言い回された。このシングル盤のコンセプトの連続性という点では、Letter From JeepersはA、B面の関係性という点でうまくまとめられた。また、ここで使われているボーカルの早回し効果がマザーズのシングルやアルバム、特にWe're Only In It For The Money、Cruising With Ruben & The Jets、Uncle Meatなどで顕著に使われていることがわかる。

 ドナ・レーベルはこのシングルを再びバフとザッパからライセンスを受けた。振り返ってみると、このような奇妙キテレツなレコードをリリースするレコード会社を見つけるのは難しかったと思うが、ありがたいことに、ザッパとバフは、ボブ・ガイやベイビー・レイ・アンド・ザ・ファーンズに合わせて、ザ・ハートブレイカーズのレコードをリリース出来た。しかも、こちらのシングルはそれまでのシングルより商業的に成功し何度もリリースされた。

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