ザッパがグランド・ファンク・レイルロードのためにアルバムを制作するどころか、彼らと同じスタジオにいるということは、当時、ほとんどの人にとって不可解なことだった。ザッパグランド・ファンク・レイルロードは、経営面やレコード会社の問題で同じ悩み事を抱えていた。グランド・ファンクは、1972年の初めにマネージャーのテリー・ナイトを解雇したが、これはナイトがバンドの収益をポケットに入れすぎていると感じたからである。グランド・ファンク・レイルロードとテリー・ナイトの法廷闘争は、延々と続いた。1976年初頭、バンドはついにキャピトル・レーベルとの契約を解除し、MCAと3枚のアルバム契約を結んだ。奇妙なことに、キャピトルの親会社であるEMIインターナショナルが、その後、グループのイギリスでのリリースを担当することになった。その頃ザッパも同様にマネージャーのハーブ・コーエンと闘争中であり、ワーナー・ブラザースとの契約を打ち切りにすることが出来なかった。そういう状況で、ザッパは1976年5月にコーエンを解雇した。この解雇に関連した訴訟により、ザッパのディスクリートの契約は一時的に親会社のワーナー・ブラザースに変更された。

 一方、グランド・ファンク・レイルロードは新しい契約を結んだにもかかわらず、実は解散を望んでいた。ミシガン州フリントのグループのマネージャーであるアンディ・カヴァリエーレは、このとき、グランド・ファンクの11枚目のスタジオLPとなるMCAデビュー作のプロデューサーにフランク・ザッパを提案した。ザッパに会った彼らは、すぐに意気投合した。ベーシック・トラックはマーク・ファーナーの農場スタジオであるザ・スワンプで録音し、オーバーダブはロサンゼルスのザ・レコード・プラント・スタジオで行うことになった。セッションシートでは、ザ・スワンプの所在地はミシガン州フェントンとなっているが、マーク・ファーナーはミシガン州パーシャルヴィルの近くに住んでいた。ザッパは、GFRにオーバーダブを最小限に抑えたライブ・レコーディングを求めた。ザッパは、グランド・ファンクがスタジオに持ち込んだストレートなロックンロールのプロデュースとエンジニアリングをとても楽しん。オーバーダブの初日にグループは解散しそうになったが、ザッパが説得して解決したという。

 解散問題の一つは、グランク・ファンクの各メンバーの能力に対する自信のなさだった。メンバーは、アルバムの売り上げを左右するようなヒット曲を作ることができなくなっていたのだ。GFRが最初のシングルに選んだのは、モータウンの曲「Can You Do It」だった。「The Contours」は、大ヒットした「Do You Love Me」に続く第4弾として、1964年2月末にモータウンのゴーディー・レーベルからこの曲をリリースした。当時、「The Contours」はビルボードのポップチャートで41位、R&Bシングルランキングで16位を記録した。グランド・ファンクのアルバム・トラックには、スタジオでの雑談や誤作動があったが、シングル・バージョンではその31秒がカットされた。マーク・ファーナーがダブルトラックでボーカルをとり、他のメンバーがよく知られたハーモニーを加えている。「Can You Do It」では、グループの直接的なロックのアプローチに、R&Bのテイストが加えられている。1976年7月26日に発売された「Can You Do It」は、全米で45位を記録した。リフを基調としたB面の「1976」は、アメリカの200周年、アメリカ人が享受している自由、そして国家の存続をテーマにしたアルバムの2曲のうちの1曲である。歌詞の中には、環境問題への配慮も盛り込まれている。ある意味、GFRの「1976」は、ザッパの「200 Years Old」に似ている。このシングルのプロモには、編集されたA面のステレオ版とモノラル版があった。アルバム「Good Singin' Good Playin'」は、シングルの1週間後にMCAから出荷されたが、店頭に並んだのは1976年8月9日であった。イギリスのプロモーション用シングル(EMI International INT 523)には8月13日発売と記載されていたが、在庫があったのは8月20日であった。L.A.のレコード・プラントで行われたMCAのアルバムのボーカル・オーバーダブ・セッションで、ザッパはドラマーのドン・ブリュワーに「Lemme Take You To The Beach」でボンゴを演奏してほしいと頼んだ。ヴォーカルにはマーク・ファーナーとエディ・ジョブソンが参加していたが、最終的なミックスにはジョブソンの作品のみが収録された。この曲は、1969年夏の「Hot Rats」のセッションで始まった。1978年に「Studio Tan」から「Let Me Take You To The Beach」という誤ったタイトルで初めてリリースされ、「Läther」では「Lemme Take You To The Beach」と正しくクレジットされていた。

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