ライコディスクは、ザッパに初の商業用3インチCDシングルを持たせたかったが、間に合わなかった。1987年10月には、デロス・インターナショナルから17分以上のクラシック音楽のサンプラーが発売されていた。そのため、ライコディスクでは、3インチのポップスCDシングルの第1号を出すことで我慢していた。この3インチCDは、7インチレコードの代わりに20分程度の曲を収録するために作られたものである。

 このライコのシングルは、ディスクを下からタブで固定する段ボール製のパッケージだった。盤面の一番下にはミシン目が入っていて、ミニスリーブに入れて保存できるようになっていた。もちろん、何度もディスクを取り出したり交換したりしているうちに、最終的にはディスクがパッケージに接続されなくなってしまうのだが。このCDの小売店への初回出荷数は、30万枚という大盤振る舞いだった。

 これは、ザッパのカタログ展開を促進するためのサンプラーで、シングルをスタートさせたかったからである。内容は、ザッパの「Hot Rats」リミックスから「Peaches En Regalia」、オーバーダビングされた「Cruising With Ruben & The Jets」から「I'm Not Satisfied」、「Joe's Garage」第1弾から「Lucille Has Messed My Mind Up」が収録されていた。この3曲はいずれも商業的には初のシングルとなり、ある意味、1969年に謎のキャンセルをした「Peaches En Regalia」がようやく初のシングル・リリースを果たしたことになる。このシングルに収録されている曲はどれもユニークなものではないので、このシングルが宣伝しているCDを買った人がこのシングルを買う動機にはならなかった。一言で言えば、コレクターとしての色気がないのである。

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